先日、腹腔鏡下で肝生検を行ったのは、とっても元気なジャックラッセルのめかぶちゃんです。
めかぶちゃんは、去勢手術の時に肝臓の数値が高いことが見つかり、
追加検査で肝機能の低下が見つかりましたが、CT検査で大きな解剖学的な異常が見つかりませんでした。
依然、肝臓の数値が下がらず、肝臓で顕微鏡的な異常が存在している可能性があるため、
詳しく調べるために肝臓の一部を取ってきて検査を行う、肝生検の必要が出てきました。
一般的に肝生検には、
①体外から針を刺して取ってくる方法
②お腹を開いて直接肝臓の一部を取ってくる方法
③腹腔鏡を用いて肝臓の一部を取ってくる方法
がありますが、
犬・猫では①の方法では十分な量や質が取れず、診断がつかないことがあるため、
肝生検が必要な場合、②・③の方法を当院では実施しています。
腹腔鏡下の避妊手術のブログで書いていますが、
開腹手術と比べ、腹腔鏡下で行う主なメリットは
①切開創が小さいので侵襲が小さい
(小型犬では開腹手術と大差がないこともありますが、腹腔鏡を使用すると小型犬〜大型犬で傷の大きさがほとんど変わらないため、大型犬になればなるほど開腹との傷の大きさの差があります)
②体内での操作になるため、臓器を引っ張って体外に出すときの痛みがない
③腹腔内臓器が外気に触れることがなく臓器の損傷が最小限なので術後の胃腸機能の回復が早い
④肉眼で見られない深いところまでスコープで細かく見ることができる
⑤縫合時間の短縮で麻酔時間が短くなる
といったことが挙げられます。
デメリットとしては
①特別な機器が必要で機器が高額なので費用がかかる
②術者が特殊な手技を習得した人に限られる
(熟練していなければ手術時間の延長にも繋がります)
③長い鉗子を使うので手の感覚が伝わりにくい
④視野に限界がある
といったことが挙げられます。
特に肝臓を触る場合には、開腹と腹腔鏡では、傷の大きさがかなり違ってくるため、腹腔鏡が適していると考えられます。
めかぶちゃんも、検査目的なので極力本人に負担をかけないよう、腹腔鏡下での肝生検を選択されました。
カメラでお腹の中を覗いた画像です。
奥に横隔膜、手前に胃があり、中央に肝臓と胆嚢があります。
カメラでこんなにきれいに見えます。
そして、実際に肝臓の組織を取っている画像です。
肝生検は少し血が出るのですが、止血のために、ガーゼを入れることもできます(中央右)。
ガーゼは、万が一ですが、お腹に忘れて来てもわかるように、レントゲンに映る特殊なものを使用してます。
組織もしっかり採れ、出血もちゃんと止まったのを確認してからお腹を閉じました。
とった組織は病理検査に送って専門家に診断をしてもらいます。
めかぶちゃんは術後も特にトラブルなく経過してくれました。あとは診断を待つのみです。
肝臓の数値が下がらない、肝生検が必要みたい、ちゃんと治療をしてあげたいけど痛い思いは極力させたくない
そういう場合には「腹腔鏡」という選択肢があります。
福岡動物メディカルパーク リヴ動物病院