急に左の下顎が腫れてきて、気にして掻いて出血している!、と来院したのは甘えん坊のにゃん太ちゃんです。
抱っこされていると落ち着いて、良い顔をしますが、診察台ではとても緊張していました。
触診とエコー検査で腫物の中に液体が溜まっていることが分かり、出血と言われていた部分は皮膚が傷んできて、
液体が滲み出てきているように見受けられました。
そこで、針を刺して中身の液体を抜いて、検査を行うことにしました。
液体を抜けるだけ抜ききることで痛みや違和感も減り、治療にもなります。
血様のドロっとした液体がたくさん抜けてきました。
液体の塗抹検査を行ったところ、たくさんの好中球とが確認され少量の細菌の存在も疑われました。
腫物の中身は、細菌感染により溜まった膿のようです。
完全室内飼育で同居猫もいないのでケンカ傷などは考えにくく、聞いてみると硬い大きな煮干しを時々食べているということだったので、
口腔内の傷からの感染性唾液腺炎が疑われました。
そこで抗生剤を効果的に効かせるために、採取した膿を用いて細菌培養及び抗生剤感受性試験を行いました。
(写真は別の子の感受性試験の様子です。)
細菌培養・感受性試験(ディスク法)は、まず培地という細菌を発育させやすくした素材を使って細菌を増やし、
増えてきた細菌に等間隔で抗生剤を含ませたディスクを置いて発育させることで、どの程度細菌の発育を阻止できるかを観察する、という検査です。
細菌を発育させる必要があるため、検査結果の判定には数日必要ですが、これによってしっかりと細菌に効果を示す抗生剤を選択することができます。
また耐性菌の問題が取り沙汰されて久しいですが、感受性検査を行い適切に抗生剤を使用することによって、耐性菌の発生を減らすこともできます。
にゃん太ちゃんは感受性試験の結果が出るまで、つなぎの抗生剤を数日使用しましたが、検査の結果ではその抗生剤は効かないという判定が出たので、
すぐに抗生剤を変更しました。
炎症によって皮膚が傷んできていたため、一度小さな穴が開いてしまったため、保護クリームを塗る必要がありましたが、
排膿ができたことと抗生剤が効いて、1週間ほどでここまで治ってきてくれました。
今の所は順調ですが、再燃に注意して経過を見ていこうと思います。
獣医師 山﨑
福岡動物メディカルパーク リヴ動物病院