先日、急にお顔が腫れてきて汁が出てきた、と来院したリリーちゃんのお話です。
おうちではおとなしいそうですが、病院ではすごく陽気なおばあちゃんです。
腫れだしてから気にしてかいていたとのことでした。
頬に大きな穴が開いて、痛んだ組織が飛び出ています。
出てきている汁を調べてみると、細菌感染による膿でした。
口の中を見てみると歯石が重度に付着しており、歯肉の炎症も酷いようでした。
位置と状況から、歯周病が進行した結果、頬に膿が溜まる「眼窩下膿瘍」と言う病態が強く疑われました。
カルテを見返していると、数年前から歯石・歯周病があったようでした。
予防診察時に歯科処置を勧められているようでしたが、年齢のこともあり、どうするかずっと迷っていらっしゃったようです。
しかし、眼窩下膿瘍は歯周病が原因なので、一旦抗生剤で押さえても再発を繰り返します。
数日は抗生剤・消炎剤で対処しましたが、しっかりと術前検査を行った上で、歯科処置行うことを決断していただきました。
膿瘍部直下の歯の歯肉の少し気になる盛り上がりも確認されたので、念のために合わせて組織生検も行うことにしました。
◎処置前
歯肉炎がひどいです。犬歯もしっかり付いているように見えて、重度に歯周を侵されていました。
◎処置後
スケーリング、抜歯・歯肉縫合、キュレッタージ、歯周へのレーザー処置を行いしっかりと歯周病への対応を行いました。
抗生剤の感受性検査も行っていたため、術後から膿瘍部の細菌にしっかり効く抗生剤を投与することができました。
処置後数日で頬の穴は塞がってきました。
歯肉の盛り上がりは病理組織検査の結果、「線維性エプリス」という診断が下りました。
歯周病の炎症の結果として発生してきたと考えられる非腫瘍性の病変でしたので、一安心です。
今後は、歯周病に気を配りながら、術前検査で見つかった加齢性の変化のケアも行っていこうと思います。
福岡動物メディカルパーク リヴ動物病院