週2、3回以上の嘔吐がしばらく続いており、血液が混じったものを吐いたと先日来院した
大柄な茶トラの男の子、ツキちゃんのお話です。
血液検査で異常はなく、糞便検査も異常無しでした。
エコー検査で胃の壁がやや厚い感じが認められたため、胃炎を疑い、対症療法として胃薬を処方しました。
胃薬を飲んでいる間は比較的嘔吐の頻度も少なくなり、良かったのですが、
薬が切れるとまた、嘔吐が増え、血液が混じったものを吐きました。
そこで、食事の変更と粘膜保護剤を追加しました。
しかし、食事の変更でも効果は乏しく、粘膜保護剤は飲めなかったため、内視鏡検査を行うことにしました。
〜消化管内視鏡検査について①〜
口 and/or 肛門から軟性鏡(曲がるカメラ)を入れて消化管内の観察を行う検査です。
また、軟性鏡に鉗子と言われる器具をいれて消化管内に伸ばすことができ、
それを用いて、消化管の一部を採材してきたり、異物を取ってきたりすることができます。
動物の場合、検査の性質上、全身麻酔下で行う必要があります。
検査をしてみると、やはり胃は全体的に炎症を起こしているらしく、やや赤っぽく、
噴門(胃の入り口)側に胃潰瘍を思わせる病変が見つかりました。(写真中央左)
血混じりのものを吐いていたのは、胃潰瘍があったためのようです。
胃炎は小腸の炎症から来ていることもあるので十二指腸の方まで確認し、組織を一部とってくる、生検を十二指腸・胃で実施しました。
〜消化管内視鏡検査について②〜
消化管疾患は原因が様々で複合していることも多く、内視鏡検査を行ったから原因が特定できる、確実に治せるというわけではありません。
しかし、明らかに目に見える、例えば今回の胃潰瘍のような病変はないのか?、炎症があるとしたらどういう炎症なのか?、
感染・腫瘍などは関係ないのか?、腸の絨毛の状態は?などなど様々な情報を得ることができます。
また逆に内視鏡生検を行っても情報が得られないこともありますが、
例えば、内視鏡で見える側には問題が無いのではないか?等、それはそれで検査・治療の方針を立てるのに大きく影響します。
他の検査もそうですが、検査はあくまで一検査なので、診断には複数を組み合わせてしっかりと考える必要があります。
ツキちゃんは胃潰瘍が見つかったため、検査直後はその対処を強化し、生検材料の病理検査結果を待つことになりました。
しっかり後のケアを行いたいと思います。
福岡動物メディカルパーク リヴ動物病院