今回は、最近お家に迎えられた人見知りしないお利口さんなツキちゃんのお話です。
最初は首輪が痒かったようでその診察をしていたのですが、
今回、急に下痢が始まり、一度吐いて、食欲も落ちたとのことでした。
家に迎えて間もないので一度便の検査をしましょうね、と話していた矢先のことでした。
カルテを見ると増えないといけない体重が増えていませんでした。
生後2、3ヶ月の子犬の体重が増えていないのはとても良くありません。
まず糞便検査とエコー検査、その結果から血液検査と後日、便中の感染症の遺伝子検査まで行いました。
徹底的に検査を行ったのは、腹水と重度の低タンパク血症が認められたためで、栄養状態が著しく悪いようだったためです。
糞便検査ではジアルジアという寄生虫の重度寄生ととらせん菌の著しい増加が認められました。
遺伝子検査にて、らせん菌はカンピロバクターで、さらに病原細菌として
クロストリジウムという菌の病原性のあるものが感染しているという結果が得られました。
実際に得られた病原体の顕微鏡の写真が下です。
◇ジアルジアの栄養型虫体(中央)と嚢子と思われるもの(左下)
ジアルジアを含んだ便に接触(拾い食い・水溜りの水を飲む・便を踏んで舐める等)し、病原体が口に入ることで感染します。
ジアルジアは感染しても必ず下痢を起こすとは限りません。
特に成犬では、不顕性感染と言って全く症状を起こさずに感染し続け、便中に排泄され続ける状態になることがあります。
そういった状態から知らず知らずのうちに感染が広がっていきます。
子犬で症状が出ることが多く、栄養吸収に影響して発育を悪くすることがあるため、子犬を家に迎えたら便の検査を行う必要があります。
なかなかこの写真のようにはっきり顕微鏡で見えることは多くないので、疑わしい場合、簡単な検査キットを使用して検出することもあります。
◇多数のらせん菌(カンピロバクターと考えられる)
らせん菌は正常な便中にも、少量確認されることがあります。
しかし、症状があって著しく増えている場合には、
他の病態でお腹の細菌のバランスが崩れている、あるいは外から新しく病原性を持った種類が感染してきていると考えられます。
特に病原性のものは人の食中毒の原因になるものもあるので、注意が必要です。
現在、ツキちゃんは虫下しをかけてウンチの調子も戻って、栄養状態も改善してきています。
まだまだ治療中ですし、子犬なので、これから予防など先のことも見据えていかないといけません。
しっかりとフォローしていきたいと思います。
福岡動物メディカルパーク リヴ動物病院