先日、首に湿疹のようなできものがあると来院した、スコティッシュ・フォールドのアーサーちゃんのお話です。
2歳の凛々しい男の子です。
よく触らないと分かりませんでしたが、左の首のところに2〜3mm大でぷつっと何かができていました。
ブラッシングの時にたまたま見つけた、とのことでした。
観察してみると、表面にかさぶたが被っているようでしたので、
かさぶたを剥がして、おできの表面の状態を検査してみることにしました。
すると…
特徴的な青いブツブツをたくさん持っている細胞が多数採取されました。
この所見から「肥満細胞腫」という腫瘍の可能性が考えられました。
「肥満」細胞と言う名前ですが、肥満とは関係なく、免疫や炎症に関係する細胞で、
細胞質の顆粒(青いブツブツ)の中にそれに関係するヒスタミンや酵素などを含んでいます。
刺激を加えたりするとそれが放出され、周囲にじんま疹や紅斑、皮下出血などを示す「ダリエ徴候」と呼ばれる状態を起こすことがあります。
犬では悪性のことがほとんどですが、猫では悪性度の低い肥満細胞腫が診断されることもあり、
猫の皮膚の肥満細胞腫は単発の場合は外科切除のみでも良好な経過が望める可能性があります。
アーサーちゃんのできものはサイズが非常に小さく、表面の検査のみでは肥満細胞腫とは断定できなかったため、
鎮静下で組織生検を行うことになりました。うまくいけば診断と治療が一緒に行える可能性があります。
念のために少し余裕を持って周囲の正常と思われる皮膚ごとの切除を行いました。
小さいうちに見つけてもらえたので小さな傷で済みました。
そして結果、病理検査にて「高分化型」の肥満細胞腫と診断されました。
高分化型とは細胞がしっかりと成熟しているということです。
腫瘍は未熟なほど悪性度が高い傾向があります。
つまり、アーサーちゃんの肥満細胞腫は悪性度があまり高くないということです。
切除生検後、再発もなく順調に経過しています。
しかし、猫の肥満細胞腫は皮膚で多発してきたり、内臓に隠れていて後で見つかってくることもありますので、
経過を注意深く観察していこうと思います。
福岡動物メディカルパーク リヴ動物病院