今回は、耳から汁が出ると来院した、小柄なパグのアイスちゃんのお話です。
話だけ聞くと、アイスちゃんは慢性外耳炎を患っているので、その再発かと思われました。
そこで、当院自慢のビデオオトスコープシステムで耳の中を覗いてみたところ…
犬猫の耳道(耳の穴)は折れ曲がっていますが、
(外から入ってすぐを垂直耳道、折れ曲がって鼓膜までを水平耳道といいます。)
その折れ曲がった先の水平耳道内にピンク色でドーム状のしこりがあり、
その周囲に膿様の液がたまっていました。
しこりは充満性で、上の図のように、そこから先が覗けず、
しこりがどこから出てきているのかはわかりませんでした。
液を検査してみると、細菌・酵母の感染があったため、
感染による炎症性に発生している可能性を考え、
まずはそちらをしっかり治療することにしました。
外耳洗浄に点耳薬・内服薬を併用して、汁の排出は落ち着きました。
しかし、しこりに変化はありませんでした。
レントゲン検査でも耳道内にしこりが充満していることが確認され、
治療で改善もないことから、しこりの細胞の検査(生検)が必要と判断し、
麻酔下でビデオオトスコープを用いて組織の採材を行うことにしました。
何をするかというと、簡単に言うと、
カメラで覗きながら、鉗子でしこりの一部をちぎってくるのです。
カメラに内視鏡と同様に鉗子を通す穴が開いているものもあるのですが、
今回は組織を大きく取るために、細いカメラを入れて、
その脇から太い鉗子を差し込んで採材する方法をとりました。
実際に実施してみると、なんと、一部ではなく腫瘤のほぼ全体がズボッと抜けてきました。
これでやっと腫瘤の全体像がはっきりしました。
鼓膜の直前の耳道の皮膚から発生し、水平耳道にほぼ充満していたようでした。
鼓膜より内側から発生していることもあるのでヒヤヒヤしていましたが、
鼓膜は無事でした。
細かいところをきれいにして、しっかり洗浄を行い、処置を終わりました。
取れた腫瘤は病理検査にまわしました。
ビデオオトスコープがなければ
CT検査をして場所を確認して、耳の切開をして取るか、
盲目的に鉗子を入れて取るという危ないことをするか、
など負担をかける可能性があったので、
最小限の負担で処置ができてよかったです。
アイスちゃんは日帰りで元気に帰って行きました。
良性であるように見えましたのが、病理検査の結果待ちです。
今後の治療が重要なので、しっかり見ていきたいと思います。
福岡動物メディカルパーク リヴ動物病院