先日、最近食欲が落ちてきてここ2、3日が全く食べない、と来院したのはキジ猫のおばあちゃんのクリスちゃんです。
来院時、とても大きな声で鳴いており、元気は無いことは無いとのことでした。
高齢の猫さんの食欲不振は往々にして全身の状態をチェックしなければ原因がわかりません。
身体検査で、脱水と宿便と軽い腰の痛みがあったので、まず血液検査とレントゲン検査を行いました。
すると脱水と腎臓の数値の上昇と、宿便と消化管ガス、腰椎の変形性脊椎症が確認されました。
変形性脊椎症は、変形性関節症の一形態で、簡単に言うと加齢よる骨・関節の破壊を伴う変形です。
高齢猫のほとんどが発症する病気で、関節の動きが悪くなり痛みが出て、活動性が低下します。
脱水・宿便・腎不全があり、脱水がある状態で関節の治療は難しいため、点滴治療を行うことにしました。
すると、少し元気・食欲の改善が見られましたが、なかなか本調子になりません。
そこで大きな声で鳴いていたことから追加検査として血圧測定を行ったところ、
収縮期血圧が200mmHg程度の重度の高血圧が確認されました。
□高血圧症:症状と治療について
(診断と原因についてはこちら→https://live-ac.com/archives/6144)
高血圧症は持続する血圧の上昇により、特に標的臓器と呼ばれる脳・腎臓・眼・心臓と血管系に障害を引き起こす病気です。
症状は障害される臓器によって異なりますが、
眼では高血圧性網膜症という状態を引き起こし、視力が低下する、
あるいは網膜剥離を起こして急性の失明に至ることもあります。
一般的には収縮期血圧が180mmHgを超えると発症リスクが高まるといわれています。
視力の低下はなかなか気づきにくいですが、
前より黒目が大きい気がする、あまり動かなくなる、物にぶつかる、夜鳴きをする
などの徴候が出ることがあります。
眼症状のある場合、視覚を維持するために早急に治療を開始する必要があります。
腎臓では線維化といって腎臓が描くなる状態を進行させたり、タンパク尿を引き起こすことにより、
慢性腎不全を発症あるいは進行させます。
これは収縮期血圧が160mmHgを超えると起こりやすいといわれています。
特に慢性腎不全から高血圧症を起こすことも多いので、悪循環に入ってしまうため注意が必要です。
脳における障害は高血圧性脳症といわれ、ケイレン発作や運動失調、虚脱、眼振などを起こします。
人では頭痛や吐き気から始まるということなので、動物でも同じなのではないかと考えられます。
急激な血圧の上昇あるいは収縮期血圧が180mmHg以上である場合に発症するリスクがあります。
激しい症状に関しては命に関わる可能性があるため、速やかに治療を行う必要があります。
心臓と血管系においては心肥大(特に左)があり、それに伴い心雑音が聴取されることがあります。
特に明らかな症状は示しませんが、鼻出血が血管系の障害と関連しているという指摘があります。
治療に関しては、高血圧の程度と起こっている症状で異なりますが、
薬による降圧治療を、高血圧の原因となっている疾患の治療と並行して行います。
クリスちゃんは血圧の治療を追加したところ、食欲の改善が見られました。
お薬を飲むのがなかなか大変ですが、腎臓の数値も安定化してきたので、お家で頑張っていただいています。
高齢なので、少しでも元気に過ごしてもらえるよう、継続してケアを続けたいと思います。
福岡動物メディカルパーク リヴ動物病院