最近ケイレンが出た、と来院したのは御年20歳のミルクちゃんです。
この写真は検査前でムスッとした顔ですが、とても20歳には見えない毛艶の良い美人さんです。
この年齢でケイレンということで脳の問題、心臓の問題、代謝の問題など
いろいろな原因が考えられたため、神経学的検査、血液検査、エコー検査をまず念のため行いました。
すると腎臓の機能低下が確認されました。
しかし、それがそのままケイレンを起こしそうなほどではありませんでした。
そこで追加検査として、血圧測定を行いました。
すると、収縮期血圧が140mmHg程度で血圧がやや高そうでした。
高血圧はケイレンの原因の一つです。
しかし、猫さんの血圧は病院に来たという緊張で簡単に上昇します。
高血圧からのケイレンが疑わしい状態でしたが、血圧に関与する薬は、特に腎臓が悪い猫さんには簡単に使うことはできません。
それに、ケイレンの診断、治療の判断にはMRI検査が必要な場合があります。
そこで、飼い主さんとお話しして、後日再度血圧を測定し直すことにしました。
□高血圧症:診断と原因について
(症状と治療についてはこちら→https://live-ac.com/archives/6137)
犬・猫の通常の血圧はだいたい収縮期/拡張期(平均)=120/80(100)mmHgくらいです。
高血圧症(体高血圧)は収縮期血圧(いわゆる「上」)が150mmHg以上の場合に診断されるのが一般的です。
高血圧症の分類としては大きく原発性高血圧症と二次性高血圧症がありますが、
犬・猫の場合はそのほとんどが何かの病気から生じる二次性高血圧症です。
(人では前者(本態性高血圧)が多いようです。)
二次性高血圧を起こす病気としては、腎臓病、甲状腺疾患、副腎疾患などがあります。
また、高血圧症は全身性疾患でいろいろな器官に障害を引き起こす可能性があるため、
診断と合わせて体の状態を確認するために、血圧測定の他に、血液検査、エコー検査、眼底検査、尿検査などを行う必要があります。
前述の通り、犬・猫の血圧は病院に来たという緊張や、家族以外の獣医師や看護師に触られる不安で簡単に上昇するため、
(白衣高血圧と言います、人でもあるそうです)
診察で一度測定したのみでは解釈に注意を要し、他の検査の結果も合わせて判断する必要があります。
後日、少し間が空いたのですが、再度血圧測定を行ったところ収縮期血圧が170mmHgと高かったのと
年齢もあり全身麻酔をかけるMRI検査のご希望がなかったため、
慢性腎不全からの二次性高血圧症と仮診断し、治療を開始しました。
現在、血圧は良好にコントロールされています。
血圧が下がると以前より元気になった、とおっしゃっていました。
その他に、、
関節部分の毛が薄くなっています。よく舐めているとのことでした。
レントゲンを撮ってみると、変形性関節症という慢性の関節疾患が疑われました。
高齢猫のほとんどが発症する病気で、関節の動きが悪くなり痛みが出て、活動性が低下します。
そちらの治療も開始しました。
前より動かなくなった、高いところに登らなくなったなどは、もしかすると年齢だけではなく関節疾患かもしれません。
猫は痛みをあまり表に出さない傾向がありますので、早めに気づいて痛みを和らげてあげる必要があります。
高齢なので、少しでも元気に過ごしてもらえるよう、継続してケアを続けたいと思います。
福岡動物メディカルパーク リヴ動物病院